平成24年2月24日付日本経済新聞から
(記事の要約)
京都私立中学校教諭(男性)の死亡は公務災害(労災)ではない、と認定した行政の判断を取り消すことなどを求めた裁判で、大阪高裁は、23日、行政の認定を取り消し、行政側に、労災認定を義務づけるよう命じる判決を出した。
(弁護士のコメント)
従来、裁判所は、行政の判断が間違いだと判断することはあっても、判断を取り消すだけで、改めて、「労災だという認定をしなさい」という命令を出すことはできなかった。
ところが、最近の法改正で、「義務づけ訴訟」というものが作られ、状況は少し変わってきた。この法改正で、裁判所が、単に行政の判断を取り消すだけではなく、もう一歩踏み込んで、「労災だと認定しなさい」と行政側に命じることができるようになった。
このような法改正には、裁判所が元の処分を取り消しても、もう一度行政側が審査して新たに処分をするまで時間がかかることがあり、裁判に勝ってもまだ救済されない状態が続くケースがあった、という背景がある。
しかし、一般の方からすれば、間違いを直して是正するのはごく当然のことであり、どうして裁判所も今まで義務づけ判決ができなかったのか?と思うのが普通の感覚ではないだろうか。法律家としては、当たり前のことを現実に「当たり前」にするのかがいかに難しいかを改めて感じる記事であった。