昨日(平成26年10月23日)、最高裁でマタハラ(妊娠や出産を理由に不利益扱いすること)は不当とする判決(判例要旨は末尾に掲載)があった。
感じたことを3つにしぼって、述べてみる。
■ポイント1 女性の裁判長だから?
記事によると裁判長は女性であるが、判決内容は5名の裁判官の全員一致の結論であったという。
性別関係なく、マタハラは認めないということである。
微妙な事件であれば、必ず、1~2の反対意見が付されているが、今回は全く反対意見がなかった。
最高裁判所のマタハラに対する確固たる意志を表明したということであろう。
■ポイント2 同意していた?
原審《広島高裁 平成24年(ネ)135号 平成24年7月19日判決》は、その女性が不利益扱い(副主任から降格したこと)に同意したと認定したようだ。
しかし、同意した人間が最高裁まで争うだろうか。
仮に同意と解釈されるような言動があったとしたら、それは会社の圧力による強制であって、決して任意になされたのではなく、無効と考えるのが筋だろう。
いずれにせよ、妊娠出産ということだけを理由にする差別は、有能な女性のやる気を喪失させるものであって、大きな目で見れば会社にとっても不利益を及ぼすものだ。
■ポイント3 特段の事情があれば不利益は認められる?
妊娠や出産したことだけを理由にいかなる不利益扱いも認められないというわけではなく、《特段の事情》があれば不利益扱いは認められると判決は言っている。
《特段の事情》というのは分かりにくいが、《普通の人の感覚からいって、これはやむをえないというような》事情があるなら不利益扱いは許されるということになる。
例えば週に2回しか出てこられないというような、管理職としての職責を全うできないという場合なら降格もやむを得ないかもしれない。
しかし、その場合でも、全日出勤が可能となれば元の地位にもどす必要があるだろう。
【マタハラ最高裁判例要旨】
一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、上記のような(男女雇用)均等法1条及び2条の規定する同法の目的及び基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨及び目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解されるが、当該労働者が軽易業務への転換及び上記措置により受ける有利な影響並びに上記措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき、又は事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度及び上記の有利又は不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するときは、同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。