~教師の残業問題について考える~(弁護士 岡井理紗)
【非正規教員・・・同一労働なのに同一賃金でない】
前回まで、主に教職員の時間外労働についての問題点についてお話してきました。
もっとも、公立学校の労働についての問題は、時間外労働だけではありません。
大きな問題の一つに、非正規教員の勤務実態の問題があります。
公立小・中学校に勤める非正規教員は、2013年度で約11.5万人、教員全体の16.5%を占めます。つまり、6人に1人が非正規教員であるということになります。
非正規教員には、期間を限って任用される臨時的任用教員と、時給制で基本的に授業のみを担当する非常勤講師の2種類があります。
そのうち、臨時的任用教員は、担任にも、部活動の顧問にもなるなど、正規教員と全く同じ業務を行います。
それなのに、正規教員とは賃金が大きく違います。
同一労働なのに、同一賃金ではないということになります。
【給与に上限が設定されている】
どうして正規教員との間に大きな違いが出るのでしょうか。
その原因の一つは、非正規教員の給与に上限が設定されている点にあります。
たとえば、ある市では、ある年齢の正規教員の給料月額をみると、標準で約36万円であり、その給与は年齢を重ねるごとに上昇することになっています。
しかし、同じ年齢の非正規社員は、全く同じ業務内容でありながら、給与月額は約22万円と4割も低く、しかも上昇することはありません。
多くの自治体では、非正規教員の給与に上限を設け、30代前半で昇給が止まってしまうのが現状なのです。
【空白期間の存在】
さらなる問題点として、「空白期間」の存在があります。
臨時的任用職員は、あくまでも職員の欠員等のため臨時に任用するという前提ですので、その任用期間の上限は1年と決められています。
そこで、年度末や年度初めに採用を途切れさせ、空白期間を設ける自治体が多いのです。
この空白期間の存在は、非正規教員にとって、様々な問題をはらんでいます。
たとえば、年度末や年度初めというのは、卒業式、入学式、離任式、クラス替えへの対応など、1年で1番忙しい時期であり、空白期間だといっても、非正規教員は仕事をせざるを得ません。
また、一度採用が途切れることによって、有給休暇を繰り越すことができません。
さらには、教員には、一般的に6月と12月に期末勤勉手当(ボーナス)が支給されるようですが、この期末手当の基準となる在職期間について、空白期間分減らされ、それによってボーナス支給額が減らされることがあるようです。
このように、空白期間の存在がまた、非正規教員を苦しめています。
【次の年も採用されるかは新年度の直前までわからない】
また、非正規教員である限りは、次の年も教員の仕事ができるという保証はありません。
学校側は、正規教員の異動や採用が決まった後、教員定数に不足が出た場合に非正規で穴を埋めます。
そのため、非正規教員の採用が決まるのは、新学期の直前である3月末ということになります。
このような不安定な雇用状態では、子供たちと向き合うことに全力を尽くすことは難しいでしょう。
【非正規教員に依存している現状】
地方自治体としては、できる限り非正規教員を採用して学校運営をやっていくほうが、人件費がかかりません。
そのため、現状としては、どの自治体も非正規教員に依存している状況だといえます。
ただ、正規教員と同じ内容の、しかも過重な労働をして、賃金が低いというのでは、非正規教員の不満はたまる一方であり、心身の問題も今以上に多発する可能性があります。
やはり、教師の仕事内容を見直し、一人一人の負担を減らした上で、得意な仕事に集中できる環境づくりが喫緊の課題といえるのではないでしょうか。