~入通院慰謝料~(弁護士 北野英彦)
前回は、保険会社が治療費の支払いを止めた場合の通院治療とその注意点についてお話しました。
今回は、治療期間と並行して発生する入通院慰謝料についてお話ししたいと思います。
(今回のテーマ)
・「慰謝料」には様々な意味合いがある
・弁護士基準で慰謝料が大幅に増額することがある
・弁護士基準は誰でも請求できる
1.「慰謝料」には様々な意味合いがある
依頼者の中には、治療費や休業損害なども含めた賠償金の全てを「事故の慰謝料」と呼ぶ人もいます。また、離婚事件では10年以上続いた子どもの養育費を支払い終わった際に「やっと慰謝料を支払い終わった」と話す人もいます。
また、交通事故で保険会社から送られてくる損害明細(示談提案書)では入通院慰謝料のことを「傷害慰謝料」あるいは「慰謝料」と書いていることがありますが、基本的には同じ意味ですので、この記事では「入通院慰謝料」と呼ぶことにします。
2.弁護士基準で慰謝料が大幅に増額することがある
タイトルに書きましたが、実は弁護士に依頼することで大幅に賠償金を増額できる賠償項目の一つに「慰謝料」があります。
交通事故の示談交渉をしているとよく
「入通院慰謝料●●万円 (当社保険基準による)」
と書かれた慰謝料の計算書を目にしますし、多くの方はそれで納得されていることでしょう。
しかし、弁護士の目から見ればそこはツッコミどころであり、私はまず「お宅の会社の保険基準なんか知らないけど・・・・」と疑ってかかります。
よくよく保険会社の担当者に基準や計算方法を聞くと、法律上正当に受けられる賠償基準(=「裁判基準」あるいは「弁護士基準」と呼びます)よりかなり低い金額であることがほとんどです。
しかし、我々弁護士が交渉に入ると、必ずこの裁判基準(弁護士基準)で交渉を行うため、保険会社も同じ基準で賠償しなければならない状況に追い込まれてしまうのです。
つまり、この「慰謝料」は、弁護士が交渉すれば正当な賠償水準まで増額できることが十分に期待できる費目といえるでしょう。
3.弁護士基準は誰でも請求できる
ここまで書いてみて、どうも「弁護士に依頼しろ」「依頼しろ」と、いう感が出ているのですが、実はそんなことはありません。
弁護士基準は誰でも請求することができます。
先ほども書きましたが、弁護士基準はあくまで裁判所が使う基準であり、弁護士だけしか使えない基準ではありません。ご自身で弁護士基準を勉強されて交渉し、さらにはご自身で裁判所に訴えを起こして弁護士基準で賠償を獲得することももちろん可能です。
もし弁護士費用特約(本連載第1回「交通事故に役立つ弁護士費用保険(特約)」参照)にご加入がなく、弁護士費用も節約したいという方は、ご自身で請求することを考えてみられるとよいでしょう。
ただ、最近のインターネット上には弁護士基準に関する情報が様々飛び交っています。
多くの情報の中でどの情報が正しいのか混乱される方も少なくありませんので、くれぐれもご注意いただきたいと思います。
次回は、慰謝料にも「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「近親者慰謝料」など様々な種類がありますので、その違いや、弁護士基準と任意保険基準の違いなどについてお話をしたいと思います。