公立学校の部活動を民間委託することが、自治体や国のレベルで盛んに議論されています。
その背景には、教職員の長時間労働の問題が横たわっています。
学校現場を知る方の話によると、教職員の中には、長時間労働によって健康を害し、教員としての職務に支障を来すようなケースもあるようです。
部活動への取り組み方については、教職員の中にも温度差があるように思います。
部活動の活動を部員任せにしている先生もいますが、それはそれでやむを得ないと思います。
一方では、使命感を持って、取り組んでおられる先生もいます。
私の高校時代の先生は、授業などへの対応とは別に、毎晩、遅くまで部活動の指導をしておられました。放課後の指導以外にも、すべての部員が提出する部活ノートに、毎日、ペンを入れ、生徒が直面するいろいろな精神的な課題にも向き合っていました。
部活動を通じて、部員と真剣に向き合ってくれる大人の存在は、人格の形成期にある中高生にとって、掛け替えのない教育効果があります。
また、現在では、共働きの両親からすれば、放課後に子供の居場所を提供するという観点からも、部活動の存在意義は大きいと思います。
しかし、その成果を支えているのが、先生の個人としての使命感や、それに基づく長時間労働であること自体、大変危うい現実だと思います。
使命感と長時間労働という危うい現実に支えられた現在の制度では、教職員の健康を害するにとどまらず、その意欲をそぎ落とすだけでなく、それによって生徒の居場所や教育の機会を奪ってしまうことにもなりかねません。
ただでさえ少子化の中で、多くの公立学校では、部員が集まらず部活の存続が危ぶまれている中で、持続可能な受け皿をどのように確保していくかは、喫緊の課題であると思います。
(弁護士 岡本英樹)