以前、ある話を聞いたことがあります。
ある弁護士が、依頼者から、〇千万円をある人に貸したのに、返してもらえないという相談を受けました。
その弁護士は、〇千万円を返すようにと、借主に文書を送りました。
その後、訴訟になったのですが、「〇千万円の半額」を貸し付けたとの主張に変わり、貸し付けた金額が〇千万円の半額と記載された金銭消費貸借契約書が添付されていた、という話です。
私は思ったのですが、一般の人にとって、弁護士から文書が届くということは、びっくりすることであり、不安になるようなことだと思います。
ですから、弁護士は依頼を受ける前に、基本的な書証(金銭消費貸借契約書や借用書など)を確認しておく必要があります。
重要な事実について、物証が何もなく、第三者の供述証拠も得られないようなケースでは難しい問題があります。
証拠がなくてもやむを得ないような事案であれば、弁護士が依頼を受けることはありますが、通常は証拠が存在するはずの事案なのに証拠がない場合には、弁護士は基本的には依頼を受けないのではないかと思われます。
法的なトラブルに備えて、証拠をきちんと保管しておくことは、とても大切です。
(弁護士 武田和也)