私の好きなシャクヤクがあった。
その花、色はピンクで、姿は八重咲で妖艶であった。
写真を見た人は《エロチックだなぁ》とさえ、表現した。
その花、梅の木の下のやや日陰になる場所に植えていた。
毎年、3~4本の花を咲かせていた。
今から3年前のことだが、例年の倍の8輪の花を咲かせた。
しかるに、その翌年、芽を出さずに枯れていた。
丁度、妻がその年に亡くなった。
子どもが小さいころ、《死ぬのが怖い》と言ったときに
妻が《心配せんでいいよ。お母さんが先に行って待っててあげるから》
と言っていた。
今年、妻の父が死んだ。
妻は、その父が大好きだった。
あの咲き誇っていたシャクヤクを見ながら、
はるかに遠いどこかで妻と義父が楽しげに話しをしているかもしれない。
この妖艶なるシャクヤクを見よ!
(弁護士 大澤龍司)