菖蒲が咲きだした。
紫色の花である。
青色系統の花は好きだが、
紫は目にきつい。
何年も前の話だが、
夕方に菖蒲を見て、きれいだと思ったことがある。
この昼から夜に移り変わる時間帯、
光の量が少なくなって
色のきつさがかなり弱まったせいだろう。
しかし、きれいというだけではなく、
なまめかしくさえあった。
刻々と、夜に移り変わるとき
見ている私の心の中に
なまめかしきものが浮かび上がり
一瞬、この花に映しだされたせいかもしれない。
菖蒲、水辺の乙女たち
(弁護士 大澤龍司)