自宅の階段に下から11個の鉢を並べている。
毎年2月から3月一番寒い時期に、きれいな肌色の花を咲かせてくれる。
その人は事業がうまくいかず、多額の借財を負うことになった。
抵当権の実行で彼女が家を立ち退くとき、
庭から5種類の花をいただいた。
階段の上から下まで咲き乱れている。
20年ほど前の話だが、
そのうちで唯一、残ったのがこの花だ。
花の名前を聞かなかったので、
くれた人の名をとり、勝手に《あつこの花》と名づけた。
借財のおかげで、子どもとも、故郷の兄弟とも縁が切れた。
《寂しかったら事務所に遊びにおいで》と言ったので、
その後、5~6回ぐらいは来られたであろうか。
その人が今、入院中である。
先週、見舞いに行き、1時間ほど話をした。
帰るとき、玄関まで送ってくれた。
帰り際に握手したが、手はふっくらとして温かかった。
又、見舞いに来るつもりだが、果たして何回、会えるだろうか。
この《あつこの花》、もっともっと増やそうと思っている。
この花の良さは、美しい肌色と
冬の一番寒い時期に花を咲かせること。