《変わらないですね》という言葉をかわした。
実に35年ぶりだから、変わっていないことはない。
互いの顔の中に昔の面影を探したから、
あるいは思いやりから出た一言であったかもしれない。
山寺の本堂の前の廊下に腰かけて話をした。
境内にはアジサイが咲いており、吹く風も涼しい。
今は寺の住職になっているその人との会話は楽しかった。
この年になるまで積み重ねてきた人生のかけらが
会話の端々にひょいと顔を出し、
少しほろ苦いが、それでも《えも言えぬ味》があった。
帰りに境内に生えていた《岩ヒバ》をもらった。
小さいながらヒバは葉を放射状に広げて、
何種類もの苔と地衣類が生えている。
あたかも大木とその下草のようで、
この山寺の自然を持ち帰ったようだ。
食卓に置いて、毎日、霧吹きをかけている。
いい話と、すてきなお土産をもらった。
久しぶりの再会、行って本当によかったなぁ。
(この内容は暑中見舞いに出したものです)