今から10年前に妻が亡くなった。
その年の大晦日、12月31日に大原に来たことがある。
その日、雨こそ降ってなかったが、曇りで風の冷たい日だった。
観光客も結構いたから、そんなに遅い時間ではなかったろう。
寂光寺へ行く途中に橋がある、それを渡る時に見た周囲の景色を覚えている。
暗く、色がなく、まるで水墨画であった。
私と言えば、胃がんの手術をし、体力の回復しない時期だった。
発達障害の長男が残された。
これから2人でどうして生きていけばいいのか。
あれから10年、今、何とか立ち直った。
息子もアルコール依存を克服してくれた。
今回、同じ橋から見た景色は十分に色づいていた。
年末というのに、木々の紅葉もきれいだった。
今、色のついた景色を楽しむことができるということは
この10年間でそれほどに回復したということでもある。
ただ、悲しみは心の底に溜まっているようで、
池の底から泡が湧き出るように
ときにプクンと顔を出すこともあるが。