和歌を引用したところで、鈴木萬平君のことを想いだした。
通称《萬平》、放送作家だった。
タバコが好きな男で、いつもピース1缶を持っていた。
どこかの文化教室で俳句の講師などもしていたらしく、
あるとき、簡単に俳句を作る方法を教えてくれた。
《大澤、俳句は簡単やで。
下の句に「根岸の里のわび住まい」をつければええねん》
例えば、《風寒く 根岸の里のわび住まい》、
《日が暮れて 根岸の里のわび住まい》、
なるほど。
50歳ころに死んだ。
若死にだが、たしか肺がんだったと聞いた。
寂光院への道途中、左手側の野原の中にススキがあった。
白い一群れがときどき吹く風になびいていた。