神戸の三宮からタクシーに乗った。
東北の震災の話になった。
地震といえば、神戸も大地震があった街だ。
あの時は大変だったでしょうねとたずねると
「あのとき、私は会社員で丁度、関東に行っており、助かりました」
そうか、よかったねと言いながら、出張する会社員からタクシー運転手になるまで、どんな人生があったのかと考えていたときだ。
運転手がポツリと言った。
「娘が圧死しました」
つらいこと思い出させてすまないと言ったら、
「いいんです。普通に話せるようになりましたから」
そのときの帰りのタクシーの話だ。
違う運転手だったが、神戸震災の話しになった。
「あのとき、私は長田の町のすぐ上の方に住んでいまして・・」
長田って、震災で火事になったところだ。
「長田の方に行って見たら、壊れた家の方から助けてくれという声が聞こえるんです。火事で、誰も助けられなかったです」
平成２３年３月３０日、あの震災から１７年目の春の初め、
街を見る限りでは、十数年前の震災を思い出すようなものはまったくない。
少し寒かったが、それでも道路脇の桜が２本、咲きだしていた。
