《パディッシュ》から来た老婦人たちの道案内
~緑、競い合うこの季節、銀閣寺道から哲学の道へ~
交差点に白人らしいが、2人のおばあさんが立ち止まっている。
人に何か聞きたそうな顔をしている。
近づいて行くと手に持った地図の中の《Ginkakuji Temple》を指差している。
あぁ、それならちょうど行くところだ、一緒に行けばよいと思った。
I want to go Ginkakuji Temple.
Go with me.
こんな英語でも通じたのか、2人は大きくうなずき、なんと日本語で「ありがとう」と言う。
そこから銀閣寺の門前まで、普通なら7~8分程度で行きつくはずだった。
ところが、歩きがゆっくりで、倍くらいの時間がかかりそうだ。
途中、どこからきたのかと聞くと、「パディッシュ」という。
そんな国、あったけ?
少し背が低く、かつ皮膚の色がやや浅黒い。
中南米?しかし、そんな名前の国ってあったけ?
一生懸命、考えている僕の顔を見て、2人は「パディッシュ」、「パディッシュ」と繰り返す。
結局、わからずじまいだった。
銀閣寺の門の近くに行くと人の流れができている。
話も通じず、このままゆっくり行くのも・・と思い、
途中で「まっすぐに行ってください、5分程度で着きます」という趣旨のことを(英語で)言って、別れた。
銀閣寺の拝観券を買って、門を入ったところでやっと気がついた。
あぁ、「スパニッシュ(Spanish)」なんだ、スペインから来た人たちなんだ!
最初の《ス》が聞こえず、
又、《パ》に強くアクセントを置いて発言していたので
《ニ》が《ディ》と聞こえたということのようだ。
もし、英語がもう少しできたら、
彼女たちがスペインから来たこともすぐにわかっただろうし、
《どんな国なんですか?》とか《ガウディは・・》とかいう話もでき、
《日本に来てどんな感じですか?》という感想も聞けたであろう。
金閣寺までの道のりに時間がかかっても、
それがかえって、ゆっくりと楽しい会話の時間になったのにと残念な気持ちであった。
さて、これをいい機会に、この歳で英語でも勉強しようかという気になった出来事だった。
(大澤龍司)
※写真(上)は銀閣寺への参道(イメージ)
※写真(下)は銀閣寺