これこそ庭!というものかもしれない。
~銀閣寺の門にたどりついて~
銀閣寺で《本当にすごいなぁ》と思った。
国宝の建物にではなく、外国人の多いことでもない。
寺の後ろの山が、である。
様々な木々の緑が輝き、
山肌を覆い尽くしており、
ふもとから頂上まで緑に燃えているというべきか。
庭園の背景の山などを《借景》ということがあるが、
そのとき、山の緑は間違いなく《主景》だった。
銀閣寺の庭園は
波紋の銀沙灘(ぎんしゃだん)と白砂の向月台(こうげつだい)で有名だが、
昼に見ると砂利の白い庭でしかない。
順路をいけば上がり坂になり、木々の中に入っていく。
東山の緑の木々の下だから、
鬱蒼として薄暗いのかと思っていたが、
意外と明るい。
手入れもよくされており、
ところどころで夕方の太陽が差しこんで、
枯葉と苔の地面を照らしている。
よく見るとところどころに板塀があり、
この林が銀閣寺の境内であり、
寺の庭の一部だとわかる。
一番高いところから見れば、下の方に国宝の銀閣が見えるが、
緑の木々の中に孤立して、まるで飲み込まれそうな感じだ。
畳や縁側から眺める庭ではないが、
人も寺もすっぽりと包みこまれるような感じを抱かせる場所だから、
この林も一種の庭と言っていいのかもしれない。
(大澤龍司)
※写真上から
①銀閣寺門と背景の東山
②木々の中
③木々の向こうの板塀
④緑に飲み込まれそうな銀閣寺観音殿