冬の奈良を歩く④
《飛火野では、人は木を目指して歩く》
私が飛火野で一番好きな木が野原の端にある。
少しの上がり坂になった頂上あたりに生えている。
葉を落とした枝だけの、名前も知らないような雑木である。
まるで人間の神経や静脈を抜き出したようで、樹形も見事とは言いがたい。
しかし、その生えている場所のおかげでよく目立つ。
背景が青空で周りに木がないので自然と眼がその方に向いてしまう。
飛火野を歩いている人は、道しるべのようにこの木を目指していく。
人間の神経だけを取り出したような木(右)
(弁護士 大澤龍司)