宿から南に歩いて行った。
道は《蒜山周回サイクリングロード》になっている。
どきどき、カップルや家族連れの自転車が横を通り過ぎていく。
宿から5分ほどのところに緩い下り坂があった。
左にペンション風の建物があった。
その道路向かいの空き地に赤紫色の花が咲いていた。
《つりふね草》だった。
これまでに、つりふね草は、京都の音羽山や新潟県の妙高で見かけたが、黄つりふね草という、黄色の花であった。
ここのは赤紫で、その色を見るのはこのときが初めてだった。
その花が2~30ほど、集まって咲いていた。
この花、蒜山の至るところに咲いており、
この季節で最も多く見かけた花だった。
この花は、花全体が一本の糸で吊り下げられている。
つられている花を船や釣り船に見立てて、
この名前がついたのだろう。
しかし、船というより、魚に見える。
《きんぎょ草》というところもあるらしい。
近づいてよく見ると、きんぎょなどでは到底ないだろう。
私にはまるで深海魚のように見える。
大きな口を開けて、今、餌に襲いかかろうとしている。
あるいはユーモラスなイカのように見えなくはない。
いやいやイノシシか豚が飛び跳ねている姿かも。
まるでロールシャッハテストのようだが、
さて、あなたなら、この花を何に見立てるだろうか?