《毎年の年の暮れは》
1年の終わりの日、ということは大晦日だが、
いつも夜の11時45分頃分に
炬燵から出て、2階に上がっていく。
雨戸を開け、ベランダを出ると除夜の鐘が聞こえる。
1駅向こうの駅前あたりにある寺から来るものらしい。
丘を2つほど超え、家の間をすり抜けてくるので
耳を澄まさないと聞こえない。
風のせいか、ときどき途切れることもある。
鐘を聞く時に心の隅に動くものがある。
悲しみではないし、あきらめでもない。
《ああ、今年も1年が過ぎたのか》
ただ、そうとでもしか言いようがないものが
浮かんできて、そしてすぐに消えていく。