【あの観音像を探して】
これまでに阿弥陀仏像の悪口を散々、書いたが、別に仏像が嫌いというわけではない。
観音像なんかは好きである。
やさしい顔も多く、親しみがわく。
法隆寺の夢違観音などは幼く、あどけない感じで好きである。
昔、奈良国立博物館で見た十一面観音が特によかった。
《顔が穏やかで、包み込むような優しさ》があった。
《慈愛に満ちた》とてもいい顔をしていた。
一緒に行った妻を待たせて、長い間、じーと眺めていた。
その後に行ったときにはもうなかった。
寺から預かっていたようだが、どこかは記憶していない。
こんな時代だからネットで、どこの寺のものか簡単にわかるだろうが、それではおもしろくない。
縁があれば、いつか、またどこかの寺で会えるだろう。
浄瑠璃寺を見た後、木津の海住山寺(かいじゅうせんじ)に行った。
山道を20分ほど走ったが、かなり急角度の登りもあった。
8世紀に創建された寺だが、その後に焼失し、鎌倉時代に再建されたという。
十一面観音が2体あるということだったが、残念ながら1体しかなかった。
顔がきつかった。
もう1体は、奈良国立博物館に預けているという。
寺のパンフレットにその写真があった。
ただ、小さすぎて探している観音かどうかはわからなかった。
お堂から外に出ると、雪が降っていた。
風も強く、厳しい寒さで厚着をしていても震えるほどだった。
境内の五重塔は国宝だが、ゆっくり鑑賞するにはあまりに寒かった。
トイレに行った後、早々に車に乗り込んだ。