【本当に風で指が凍えそうだった】
飛火野の南端は急な下り坂になっている。
南端の少し手前の地面が掘れてくぼんでいる。
大雨が降れば、川になるんだろうが、
普段は水が流れていない。
いつも少し水が溜まったぬかるみになっている。
この横に生えている木を毎年、撮影している。
同じ種類の木が川の上流の似たような場所に生えているから
こんな湿っぽいところが好きなのだろう。
この木の秋の紅葉をテレビのニュースで見かけたこともある。
冬は葉を落とし、枝だけが寒々と空に伸びている。
むき出しの裸で、斜面から吹き上げてくる風にひたすら耐えている。
その孤独というか、孤立というか、その姿がいかにもかっこよい。
去年(2020年)の大晦日は寒かった。
雪もちらつき、風も吹いて、カメラを持つ手がちぎれそうだった。
《頑張っている木には悪いが、わたしゃお先に失礼するよ》
と宿の方へ向っていった。