今年の夏の旅行は阿蘇山へ⑤
路線バスに乗り換えるまでに30分ほどの時間があった。
周囲を山に囲まれた、この土地、立野(たての)も暑かったが、
少し風が吹いており、涼しく、山に来たという実感があった。
バス停の横に食堂があり、そこに看板がかかっていた。
《創業明治40年 ニコニコ饅頭》
どんなものか見ようと、戸を開けた。
奥で話をしていた老夫婦、
といっても、私とそれほど変わらないくらいの年齢ぐらいだから、
ここはおばさんと言っておこう、
その人が立ち上がって、近寄ってきた。
《ニコニコ饅頭》という言葉を出したとたんに、
《8個、400円》という言葉が返ってきた。
《えー、8個もいらんが・・》と言おうとしたとき、
饅頭の入った箱を手に取り、《8個、400円》と、また言った。
《4個ぐらいでいいんだけど・・》と思った時、
その饅頭の箱を、私の目の前に突き付けた。
ここまでくると、完全に気合負けで、
結局、買わされてしまった。
長男に食べるかと聞いたが、いらないという。
待合の椅子に座って、一気に4つを食べた。
白い薄皮に包まれた小ぶりの饅頭で、
こし餡で素朴な味だった。
なるほど、これは明治40年かもしれない。