あれから50年、再び大山へ⑱
下山のとき、太腿の前あたりがくたびれ、
足の弾力性がなくなっていた。
階段をおりようと右足を出したときだ。
体が右側に傾いた。
《あかん》と足を踏んばった記憶はある。
傾きは止まらず、顔が地面に近づいていった。
根元を切断された木、そんな倒れ方だった。
顔をぬぐって確かめた。
手に枯葉がついてきたが、出血はしていなかった。
下山し、駐車場で待っていた子供に会ったとき、
《途中でこけたけど、どこか怪我してへんか》と聞いた。
次男が《右目のところが変色している》と言った。
・・・《それは昔からあるシミや》
次男のやつ、本気で言ったのか、冗談だったのか。