あれから50年、再び大山へ㉕
≪写真中央が大山、右側が植田正治写真美術館≫
今年、5月ころだったか、HPの写真を変えるために
カメラマンに事務所に来てもらった。
撮影の合間に少し話をした。
写真家で誰が好きかという話になった。
私は《植田正治がいいなぁ》と言った。
《植田正治ですか・・・》と
カメラマンは全く予期せぬことを聞いたような感じだった。
大山登山の翌日、観光地図で見つけた《植田正治写真美術館》に行った。
その美術館、本当におもしろかった。
なによりも、展示されている作品が良かった。
少女4人や植田の家族4人がいずれも横一列に並んでいる写真からは、
昭和の初めから中ごろの人々の物語の匂いが立ち上ってくるかのようだ。
(この美術館のHPで作品の一部を見ることができる…リンク)
特に印象的だったのは、
農家の庭の中央に狐の面をかぶった人が立っているモノクロの写真だった。
その人は着物を着ており、やや高い下駄をはいている。
この狐の面の人、男かな女かな、男らしいけどなぁ・・と思ったが、
結局わからなかった。
手前で、それを見ているおさげの少女2名は上半身の後ろ姿だが、
小学校4,5年生ぐらいだろうか。
(この写真を載せたかったが、前記HPにはこの写真は載っていなかった。)
植田の写真はそこで起こった物事を撮影するのではなく、
あらかじめ人を配置する演出だったらしい。
けれども、事実にべったりとへばりついたリアリズム写真よりも、
はるかに《その時代のなにか》を映しているようで、なんともなつかしい。
この感情、わたしのような昭和の人間だからわかるのか、
それとも時代とは関係なしに伝わるものなのか。