秋の伊豆半島、山と石、海を見て歩く⑪
花は不思議だ。
日中は目立たないのに、夕暮れに妖艶に見える花がある。
夜暗く帰宅して玄関灯の下の赤色が鮮烈だった花もある。
今回、行った爪木崎に《ユウスゲ》が生えていた。
今にも雨が降るかという薄暗さの中で、
朱色の花弁に黄色のライン、やけに目立っていた。
花から人を連想することなどなかったが、
そのときには《これは漁師の娘だな》というイメージが浮かんだ。
この激しい色は、着物の色か、あるいはその娘の持つ魂の熱量か。
若者と、ここで2人、密かに会っている。
誰も来ないような柱状節理の岩場で逢引き、
危ないような、危なくないような・・・